《 いじめ 》 について考える  その2 いじめ三例

 前回はいじめの要因について私なりの考えを申し上げました。
今回は実際に私が現職時代に経験した事例について考えてみたいと思います。(名前はすべて仮名)

事例その1
小学校2年生のひとみちゃんの家は、家業が小さな食堂でした。両親は仕事柄どうしてもひとみちゃんの身の回りのことにかまってやれませんでした。そのためか服装やみだしなみが、ほかの友達とくらべてだらしなくなるのも仕方のないことでした。
 新学期がはじまって間もなくのころ、ひとみちゃんが帰ろうとしたら、下駄箱の中に靴が無いことに気づきました。
教室で仕事をしていた私のところに、いまにも泣き出しそうな顔をしてそのことを告げにきました。
私とひとみちゃんでその辺を一生懸命さがしましたが、とうとう見つかりませんでした。
私は仕方なくひとみちゃんの自宅に連絡して代わりの靴をもって来ていただき帰宅させました。
私は、翌日の学級会で、クラスの子どもたちに事実をありのままに伝え、もし自分がその立場になったらどんな気持ちになるか、考えさせてみることにしました。

事例その2
よしこちゃんは、小さいときからピアノを習ってきたので、四年生とは思えないほどピアノを上手に弾く子でした。
学芸発表会の時の伴奏を誰にさせるかを学級で決めた時のこと、もちろん、よしこちゃんが選ばれました。
学芸発表会も終わって間もなくのころ、よしこちゃんが泣きながら私のところにやって来ました。よく事情を聞いてみると、A子ちゃん達にいじめられたということでした。
いじめたA子ちゃんは成績も良く、ピアノも上手に弾ける子で学級でも目立つ存在でした。いじめの理由は、A子ちゃんが学芸発表会の時の伴奏者に選ばれなかったことでした。私は、両者の保護者に、この事実を率直に伝え、この問題解決のために担任としての指導方針を伝えて協力をお願いしました。

事例その3
六年生のまさるくんは、成績はそれほど良いという子ではありませんでしたが、とても正義感の強い子でした。いつも帰りの反省会などで、その日にあった出来事について、悪いことは悪い、とはっきり言う子でした。
ある日の授業の時、一番前の座席に座っているまさるくんが、いつもとちがってしょんぼりとした態度で授業を受けていました。
 放課後、まさるくんをそっと呼んで事情を聞いてみたところ、前日の学級会で良くない行動をまさるくんに指摘された友達数人から、いろいろ悪口をいわれたということでした。
翌日の道徳の授業で「真の友達」についてとりあげ、子供達一人ひとりにこの問題について考えさせて見ました。

以上取り上げた事例は、小学校で日常的に起きる「いじめ」ですが、この事例から
お分かりのように、以前は「いじめ」を受けやすいこどものタイプがある程度はっきりしていたようです。
しかし、最近の事例では、「いじめ」が無差別に起きているようになってきているところに問題の深刻さがあります。
 とくに中学校では小学校以上に「いじめ」が陰湿で、発見しにくい方法でおこなわれるようになってきていると言われています。

次回は「子供がいじめにあったとき」について考えて見たいと思います。



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